努力に恋をする




 あの日は雲ひとつない星達が輝く
 7月7日。七夕の日。


 織姫様と彦星様が1年に1度だけ会える
 特別な日。



 あたしにとっては、、、




 織姫様と彦星様が最愛の人を奪った






 悪夢の日。










 ーピピピッ ピピピッ ピッー


 『、、、うーん。』

 今何時だろ。18:21。

 『えぇ!!??やっばい!遅刻!!!』

 今日は7月7日。
 あたしの自慢の彼氏のりょうくんと
 地元の七夕祭りに行く日!!!

 七夕で星を見るお祭りだから
 少し遅めの集合で
 19時に稲荷神社の鳥居前集合。


 、、なんだけど。


 あと40分でつかないといけない。


 鳥居までは家から15分。


 やばいやばいやばいやばい!!!



 りょうくんは遅刻大っ嫌い。
 この間、2分遅れて
 待ち合わせ場所に着いたら
 あと30秒経って来なかったら
 帰るところだったって言われた。


 

 全力で準備して、全力で走った。



 鳥居に着いたのは、19:00ぴったし。



 『ハァ、ハァ、、ハァ』

 『沙織、もっと余裕もって行動しろよ』


 そう言いながらりょうくんは笑ってた。


 『ごめ、、ごめん!
  でも、ちゃ、ちゃんと間に合った!』

 『ん。』


 左手を差し出してくる。
 その手にあたしの手を重ねる。


 『俺が待つの嫌いって知ってるから
  こんなに走ったんやな。
  、、ありがとう。』


 前を向いたまま、ぎこちない。
 でもあたしには最高の褒め言葉。


 『りょうくんの事大好きだからね!』

 『ばっ!馬鹿!!声でかいわ!!』


 可愛い。


 2人で手を繋ぎながら歩いて
 神社の奥の広場に着く。

 割と人がいる。

 広場にはブルーシートがあって
 そこに寝転がって星空を見るらしい。
 屋台は3軒。いちご飴とポテトと綿飴。

 後でいちご飴買おーっと。


 『着いた!』

 『よし、じゃあ、見るか!』


 りょうくんと横に並んで寝転ぶ。
 人が多いから必然的に密着する。

 なんか緊張する。


 『沙織、、緊張してる。』

 『あ、当たり前。りょうくん近いから。』

 『俺も一緒。』

 『え!!』

 『なんだよ。悪いか!!』

 『全然悪ない♪』



 ふと目が合う。
 あたしが目を閉じると
 唇に柔らかくて甘い感覚。

 目を開けると頬が赤いりょうくん。

 あー、外だと恥ずかしい。
 今度家行った時は
 あたしからしようかな。ふふっ。



 なんて考えてたけど
 今思ったら、、この時が、、、




 りょうくんに触れた最後の瞬間。





 『よし、そろそろ帰るか。』

 『そうしよ!
  あ、いちご飴買ってくる!』

 『ん。了解!』


 足早にいちご飴を買って
 りょうくんのところに帰る。


 いつも通り並んで歩いて帰る。

 あたしはいちご飴を食べながら。




 交差点に差し掛かる。






 ーキキィィィイイイイイー




 バンッ!!









 何が起きたの、、、、




 なんで隣にいたりょうくんが、、、、




 目の前に倒れているの、、、、




 『りょ、、う、く、、ん、?』


 『りょうくん!!!!!!』




 走って駆け寄って
 りょうくんの顔が見えるように
 うつ伏せを仰向けにする。



 『りょうくん!!!りょうくん!!
  ねぇ!!!りょうくん!!!
  起きて!!起きてってば!!!
  りょうくん!!!!!』


 あたしの腕の中には
 頭から血を流しグッタリとした
 りょうくんがいる。


 『お、おい!救急車!!!!』
 『何?何があったの??』
 『あれはやばいやろ』
 『彼女さん、大丈夫かな』

 野次馬が、増える。




 誰か、、、誰か、、、
 誰か、、、誰か、、、


 誰か、あたしの大好きな
 自慢の彼氏、最愛のりょうくんを












 、、、、助けてください。













 あたしの手や服にはりょうくんの血。




 りょうくんはどこ。




 どこにいるの。




 これは夢?





 『、、、ぉり!』



 『沙織!!!!』




 ハッとして、顔をあげる。



 目の前にいたのは、、、優。



 『、、、優。』



 『、、、、沙織。
  沙織には優がついてるから。
  大丈夫。何があっても一緒にいる。』


 『、、、優?
  、、それ、、、、どういう意味?』


 『、、、落ち着いて、、聞いて。
  りょうくんは、、もう、いない。』





 え?





 なんの冗談?





 みんなでなんかのサプライズ?





 にしては、大掛かりすぎやって。




 ねぇ、、、みんな。




 嘘って言ってよ。



 なんで。



 なんでよ。



 、、なんで、、りょうくんなの。





 『いやぁぁあああああ!!!!!!
  りょうくん!!りょうくんどこ!!
  どこにいるん!!!りょうくん!!』


 『沙織!!!!』
 

 『いやぁぁああああ!!!!!』


 『沙織!!!!』



 『りょぉぉおおくぅうううん!!!』



 『沙織!!沙織!!さお、、、』



 ーバタッー 




 目を覚ますと、病院のベッドの上。


 右手を握っているのは、、、


 『、、、優?』



 優が顔をあげる。
 みるみるうちに目に涙が溜まっていく。


 そして滝の様に流れる。


 『さぁぁあおぉおおりぃいい!!!』



 この世の終わりのように泣くから
 笑ってしまいそう。
 でも何故か笑えない。



 笑顔が出来ない。



 あれ。りょうくん。
 りょうくんはどうなったんだっけ。



 りょうくんは、、、、



 "りょうくんは、、もう、いない。"

 優の言葉を思い出した。



 りょうくんが、、、いない。



 泣きたいのに、、



 涙が枯れたみたいに、、、



 出てこない、、、






 織姫様と彦星様は


 あたしの最愛のりょうくんを奪った。


 笑顔と涙も奪った。




 七夕なんて、、、なくなってしまえばいい。








 それからあたしは無事退院して
 日常に戻っていった。



 りょうくんのいない日常に。



 何回死にたくなったかわからない。
 その度に優が支えてくれた。
 一緒に泣いてくれた。

 高校は優と離れたくなくて猛勉強。



 そして、神壱高校に合格した。






 りょうくんが居なくなったあの日から
 あたしは何かを失ったままだ。

 でもそれが満たされると
 りょうくんがあたしの中から
 居なくなってしまいそうで、、怖い。


 優はあたしを笑顔にしてくれる。
 優のお陰で笑顔を取り戻した。





 『優、いつもありがとうね。』

 『何をいまさら!笑』

 『りょうくんがいなくなった日から
  あたしを支えてくれて
  いつも側にいてくれてありがとう。』

 『神様、仏様、優様やからね!』

 ふんっとドヤ顔で見てくる優。
 それを見てまた笑う。


 『じゃーーー
  いつもの感謝の気持ちを込めて
  今日はあたしの奢り!!』

 『よっしゃー!!!』



 そうしていつものように
 他愛ない会話をしながら帰路につく。


 今日は1日疲れた。
 疲れた原因は 尾方圭介。



 猫みたいなやつ。



 あの涙の理由はなんなんだろう。



 目が笑えない理由はなんなんだろう。



 どうして気になるのかよくわからん。
 でも1つ言えるのは


 直感やけど、、、
 心の綺麗な人って感じがする。







 あたしの失った何かを
 教えてくれそうな人。








 『あー、今日は頭使いすぎた。
  風邪ぶりかえしたくないし、、
  今日は早く寝よう。』



 そして、、あたしは眠りについた。