ーコンコン ガラッー
あれ?先生おらん。
人の気配すらない。
山部、アイツ、サボりか?
いや、あれは体調不良以外の
何者でもない。
『ハァ、、ハァ、ハァ、、、』
『山部!!!』
俺の目に飛び込んで来たのは
ベッドの手前で倒れている山部。
わざわざ床で寝るやつなんかいねぇ。
息が荒い。頬が赤く染まっている。
どんだけ我慢してたんだよ。
山部を抱き上げてベッドにソッと移す。
ーギュッー
一瞬何が起きたのか分からなかった。
今、目の前には、眠れない子供が
一緒に寝ようと甘えているような
山部が抱きついている姿。
守ってやりたい。
直感でそう感じた。
頑張れ。俺の理性。
俺は後ろから抱きしめるようにして
ベッドに横になった。
安心したのか荒い息遣いが
段々可愛い寝息に変わる。
『りょ、、う、く、、、ん』
は?誰だよ。俺じゃねぇのかよ。
あ、こいつ俺の名前知らねえのか。
なんだよ。イラつく。
ふわっと山部の匂いがする。
イライラなんてどっかに飛んでって
俺は眠りについた。
夢を見た。
由紀にフラれる夢。
思い出したくねぇのに。
しかもこのタイミングで見る夢か?
つくづく自分が嫌になる。
あー。駄目だ夢なのにまた泣きそう。
『、、綺麗。』
眠りから戻りかけた意識の中で
ぽつりとそんな言葉が聞こえた。
『ふぅ。』
と息を漏れる音がする。
目を開けてみる。
山部が起きてる。
こっちを見ていた。
またあの心配そうな顔をして。
『大丈夫。あたしがいる。』
彼女はそう言って俺の涙を拭う。
正直びっくりした。
初めてしっかりと山部の声を聞けた。
いつも聞こえないぐらい小さいのに
今ははっきりと聞こえる。
頼ってしまいそうになる声。
『あっ!?えっ!?えっと!!
今のは!!そのっ!!えっと!!
イケメンにイケメンな事をして
ごめんなさい!!!!!』
え?笑
山部ってこんなキャラ?笑
イケメンにイケメンな事してって。笑
というかイケメンって
思ってくれてんだ。嬉しい。
『ふふっ、、ふはははは!!』
思わず笑い出してしまった。
なんでって顔してるけど
完全にこれは山部が原因。
『ありがとう、沙織ちゃん。
お陰で気持ちが落ち着いた。』
『え、名前。なんで知ってるの?』
あぁ。やっぱり、俺の事知らない。
割とモテるし有名なんだけどな。
まぁ、そうゆうところもいい。
なんか意地悪したくなる。
『さて、なんででしょう。』
『教えてくれないの?』
教えてやんない。
俺に興味持て。気づけ。
『てゆうかさ、いつまでこうしてたい?』
『え?』
さらに意地悪をする。
みるみるうちに頬が染まっていく。
バッと突き放された。
可愛いすぎ。これ以上見れねぇ。
『じゃ、俺行くわ。』
『え』
『何?行って欲しくないん?』
『そ、そんなんじゃない!!!』
『そっか。そんじゃまたね〜』
ーガラガラ バタンー
やべぇ。心臓がバクバクゆってる。
これでちょっとは記憶に残ったかな。
俺の事探してくれるかな。
『ふっ』
少し笑って俺は教室に向かった。
