集合場所に着いた。
 優と柏木くんを探す。


 尾方くんが急にあたしの腕を引っ張って
 物陰に隠れだした。


 『え!?何!?』

 『しっ!』

 そう言って口元にあった人差し指で
 ある方向を指す。


 そこには
 仲良く手を繋いでいる柏木くんと優。



 『わぁ!!付き合ったんだ!!』

 『みたいだな。』

 『お似合いだなぁ〜。』

 『蓮が朝からソワソワしてたから
  気持ち伝えるとは思ってたけど
  まさか付き合うとはな。』

 『早くおめでとうって言いたい。』

 『よし、行くか。』



 2人のところに向かう。

 あたしと尾方くんが見えた途端
 2人がパッと繋いでた手を離す。

 あ、だからか。
 だから尾方くんは物陰から
 一旦2人を見たんだ。
 手繋いでた2人。可愛いかったな。
 写真でも撮れば良かったかな。笑
 また今度撮らして貰おう。笑


 『2人とも!!!おめでとう!!!』


 『え!さお!何で知ってるん!!』

 『2人見てたらわかるよー!』



 『圭介!俺!優と付き合った!!!』

 『おう。知ってる。おめでとう!』


 2人が顔を赤く染めて微笑み合ってる。
 その光景を見てるだけで幸せになる。


 柏木くん、優って呼んでるし。


 ニヤニヤが止まらない。


 『さお、顔。緩みすぎて怖い。』

 『なっ!?失礼な!』

 『応援してねー♪』

 『するに決まってる!!』

 『ありがとうーー!!さおー!!』


 抱きついてくる優の頭を撫でてると
 武士男が声を上げる。


 『よーし。全員揃ったなぁー。
  バス乗り込めー。』


 ぞろぞろとみんなが乗り込み
 あたし達も乗り込む。


 バスの中では2人の話でもちきり。
 顔を赤くしながら話す姿が
 可愛いくて可愛いくて
 行きのバスとは違った雰囲気で
 同じぐらい一瞬で着いた。


 『よーし。今日は終礼なし。解散ー。』


 みんなが帰りだす。


 『よし、帰ろっか。』

 『あ、、さお。
  、、今日蓮と帰ってもいい?』


 そっか。そうだよね。
 2人で帰りたいよね。
 その気持ち、めっちゃわかる。

 でも何だかちょっと寂しいな。


 『全然いいよ!!
  柏木くん、優の事よろしくね!』

 『まかせて!沙織ちゃん!!』

 『うん!じゃ、また明日!
  明日話聞かせてね、優〜♪』


 顔を赤くして、満面の笑みで頷く優。


 『さてと、帰るか。』


 そう言って家の方向に向く。


 『送る。』


 背中から声がかかる。


 『え?』

 『いや、だから、送る。』

 『いいよいいよ!帰れるし!!』

 『いや、心配だから。』

 『大丈夫だって。』

 『送りたいから、送らして。』

 『え、、。』

 『早よ、いくで!』

 『え、、あ、待って!!』


 あたしの声が聞こえていないかの様に
 スタスタ歩いて行ってしまう。

 先に行ってしまった背中を追いかける。


 『ねぇ、1人で帰れるってば。』

 『しつこい。』


 何を言っても意味がない。
 諦めて送ってもらう。


 15分程歩く。

 何を話していいのかわからなかった。

 ずっと、、無言。
 でも居心地が悪くはなかった。

 家に着いた。


 『、、送ってくれて、ありがとう。』

 『うん。送らしてくれて、ありがとう。』

 『ぷっ。何それ。』

 『全然喋らんから怒ってると思ってた。』

 『送って貰って怒るやつなんか
  居たらびっくりする。』

 『ははっ。確かに。』


 他愛ない会話をして
 そろそろバイバイって言おうとした時


 ーガチャー


 『あら〜〜♪
  沙織を送ってくださったん〜〜?♪』


 あー、最悪だ。
 なんでこのタイミングで

 お母さんが出てくるの。


 『あ、初めまして。
  沙織さんと同じクラスメイトの
  尾方圭介です。』


 こんな急な登場に驚きつつ
 しっかりと挨拶をしてる。
 案外律儀なんやな。

 呑気にそんなことを考えてたら


 『良かったら圭介くん上がって〜♪』


 『『え゛!?』』


 2人の声が同時にあがる。


 『ちょ、お母さん!!!
  そんな事急に言ったら迷惑やん!』

 『あら、迷惑やった?圭介くん、、。』


 お母さんが少し泣きそうな声で言う。


 『あ、いえ、全然時間は大丈夫です。』

 『あらそう!じゃ上がって上がって♪』


 ちょっとまてーーーーーい!!!
 何お母さん嘘泣きして騙してんねん!!
 しかも尾方くんも何了承しとんねん!!


 『え、ちょ、ちょっと、、!!』


 あたしの言葉なんて
 聞く気のないお母さんが
 グイグイ引っ張って
 尾方くんを家に招き入れた。


 あー。なんでこうなるんよー。


 こうなるともう止まらない。


 晩御飯食べさせて
 あたしのちっさい時の話を
 1から10まで全部話す。


 『あー、もう、知らない。』


 そう呟いて、あたしも家に入る。