都会の暑い風から解放された私は涼しい風を浴びながら田舎に引っ越してきた。
私の名前は久永志那。(ヒサナガシナ)
田舎にきた理由は他でもない。親の転勤。
高校二年の7月初旬のこの中途半端な時期にどうしてってほんとに思うよ。
だが以前の学校に未練などなかった。
親友と呼べる友達などいない。
ましてや彼氏なんているわけがない。
だって私地味だし、無表情だし、愛想笑いだから。
周りの女子から非難されることもしばしば。

「着いたよ、志那。 早く荷物出して」

新しい家の前に車を停め、車から降りて私に手招きをする母。

「はいはい、慌てないでよ」

ちなみに父は前日にもう着いていて今日は会社に挨拶回りをしている。