ラズベリーな恋模様(A・T)




驚いてそちらに目をやると、玲汰先生はそのまま繋いだ手を上に上げて、何かをあたしの手に握らせる。

少し冷たい無機質な感触に、あたしは不思議に思いながら、握らされた手のひらをそっと開いた。




「えっ…………」



息が詰まる音がした。
一瞬、呼吸の仕方を忘れた。
何が起こったのか、分からなかった。


ただ、あたしの手のひらの上に、銀の指輪が乗っていたのとだけは分かった。




「……結婚、する?」


そんなあたしの耳に入ってきたのは、玲汰先生の声。
たった四文字の、単純な言葉。

でも、あたしの思考を止めるのには、十分だった。



あたしはゆっくりと玲汰先生の方を向き、驚いたまま、じっと玲汰先生を見つめた。