駐車場で車を降り、山を散策することにしたあたし達は、整備されているものの、ほんの少し危険な山道を登る。



「あっ、見て!この木、真っ赤だよ」
「ん?ああ、そうだな。こっちも綺麗に染まってる」
「本当、良い時期に来たね」

あたしはもみじの葉を一つ持つと、それをくるくる指先で回しながら歩く。



一歩前を歩く玲汰先生の背中が大きくて、あたしは幸せを感じていた。


玲汰先生の私服を見れる生徒は、彼女であるあたしだけ。
ここに連れて来てもらえるのも、あたしだけ。

そんな、何でもないような特別感に、胸が踊るのだ。




しばらくそうやって歩いていると、ふと、玲汰先生の足が止まった。
玲汰先生は前をじっと見つめている。


「どうしたの?」

あたしは玲汰先生の背中から顔を出し、そちらを見てみると、


「何あれ…教会?」

そこには、とても小さな教会がこっそりと佇んでいた。