「じゃ、じゃあ……」
透に譲ってもらい、あたしは口を開いた。
「今日さ、実は、すごい緊張してた」
「うん」
「何話せばいいんだろう。何すればいいんだろう。透は、あたしといて楽しいのかな。ちゃんと、思い出に残るデートが出来てるのかな。一日中、そんなことを思ってた」
初デートだから。
思い出だから。
そんな気持ちに囚われて、ずっと透の顔色を伺っていた。
それじゃ、駄目なのに。
「……実は、俺も同じこと言おうとしてた」
透から返ってきたのは、そんな言葉だった。
あたしは透の方を向き、笑った。
忘れていた。
あたしと透は似ている、ってこと。
似ているから、そんなに気負わなくて良かったのに。
あたしが楽しいことは、透にとっても楽しいことなのに。


