ラズベリーな恋模様(A・T)




ふと、隣から聞こえてきた声に驚く。

あたしの思いを代弁したような、あたしの気持ちそのものを口にした言葉だったからだ。


あたしと透は、その声がした方を向いた。
座っているはずなのに、同じ目線に顔が三つあった。


「ねえ、お兄ちゃん!それ、ちょうだいっ」

少し高めの声でそうねだってきたのは、小学校低学年生くらいの男の子。
周りには、その友達と思われる男の子と女の子がいた。


「君、お母さんかお父さんは?」

透は男の子にそう尋ねる。


男の子は少しの間黙ったが、その後、

「いないよ!今、探してるの」

と、言った。


「探してる?」

あたしは首を傾げる。
男の子は頷く。


「あのね、お父さんもお母さんも、最初からいなくて。僕達、新しいお父さんとお母さんを探してるの」