ラズベリーな恋模様(A・T)




「ほら、だからガキは引っ込んでろってーの」
「…だけどさ」


ぱっ、と俯いていた顔を上げ、渉くんはまっすぐ強い瞳で岡崎くんを見つめた。

そして、


「だけど、この気持ちだけは、絶対誰にも負けない自信がある。…あとさ、さっきからずっと言ってるけど!瑠梨は俺のものだから!触んじゃねえよ!!」

と言って、無理矢理あたしの手を引き、岡崎くんからあたしを離した。


岡崎くんは驚いたような顔をして、こちらを見る。
あたしも、渉くんの言葉に驚く。

いや、きっと、この場にいる全員、驚いているだろう。


その大半の人は渉くんが怒鳴ったことに、だろうけれど、あたしは違う。

渉くんが、瑠梨って呼んでくれた。
瑠梨、って。


それが驚きで、だけどとても嬉しくて、言葉に言い表せないくらい嬉しくて、あたしは思わず、

「渉くん!」

渉くんの手を握って、満面の笑みを浮かべた。