ブスも歩けばイケメンに当たる⁉

一瞬、ポカンとした私だったけど、次の瞬間には吹き出していた。

入社して以来、久しぶりにこんなに笑ったかもしれない。

「…それ、笑うところか?」

ちょっと困り顔で、榊さんが言う。笑いすぎて流れた涙を拭きながら言い返した。

「…自分でも同じこと思ってたので。あまりにドンピシャな例えだったのが可笑しくて」

…なんだか、和んじゃってるけど、大丈夫?

「…笑いすぎてすみません、でもあの、それなら尚更、そんなに有名?な私と一緒にいたら、彼女さんにご迷惑が。なので、本当にもう帰ってください」

「…」

…あれ?さっき迄の優しそうな顔が、険しい顔つきに変わっている。…なぜ?

「…あの?」
「…ちょっと、キッチン借りるぞ」

「…えっ?いや、榊さん、人の話聞いて」

…なかったのか?

スッと立ち上がれない私をよそに、立ち上がった榊さんは、キッチンに行くなり、何を思ったか、冷蔵庫を勝手に開け、食材を吟味。そして、何かを出すと。

「…料理始めちゃった」

思わず口から出た。

食材を切り、鍋に入れ、軽く炒めると水を入れ蓋をした。

「…伊集院さん、風呂場は?」
「…え?あっち」

呆気にとられながら、それに答える。

…、なんなんだ、一体。

榊さん、完全に主夫ですけど。

いつの間にか風呂場から帰って来た榊さんが、キッチンでまた料理をする。

間もなくして、お風呂のお湯が張られた事を知らせる音楽。


「…風呂入ってきて」

…なんて、至れり尽くせり。癖になりそう。