…目が覚めると、いつものように、春人のドアップ。

毎朝のように見ているはずなのに、毎回発狂しそうになる私。

「…だって、キレイなんだもん」

ボソッと呟く。

こんなキレイな顔の春人に溺愛される私は、もしや珍獣ではないかと、思わずにいられない。

まだ眠る春人を起こさないように、そっと起き上がると、いつもの場所に置かれてる筈の物を手探りするも、ソレは無く、仕方なく立ち上がる。

パキ。…パキ???

柔らかな物を踏んだ筈なのに、なんでそんな音が。

しゃがみこみ、めくってみると。

「…うわっ。どうしよ…」

一個しかないのに。

「…桜子?」

目を覚ました春人が、むくりと起き上がって、ベッドの下にしゃがみこむ私に問いかけてきた。

「…春人~」

半泣き顔で、春人の目の前に、ソレを差し出した。

「…あ、あ~あ、予備は?」
「…これ一個しかないです」

私の答えに、春人はため息をついた。

「…ド近眼なのに」
「…メガネ無いとか、無理だろ?」

「…会社まで辿り着ける自信ありません」
「…だろうな」

…結局、今日は、メガネ無しで過ごす羽目に。

「…昼休みに連れてってやるから」
「…すみません、お願いします。…ところで」

「…何?」
「…この手は、離した方がよくありません?」


出勤中も、社内に入っても、繋がれた手は離されず。


私のオフィスの前で、ようやく止まった。

「…怪我せずに着いただろ?」
「…」

そうですけど…

目は見えてなくても、雰囲気でわかること。

異様なほど、好奇の眼差し。痛すぎますが。


「…昼休みに来るから」
「…はぃ…お願いします」

春人がいなくなってからも、その眼差しは収まらず、俯き加減で、デスクについた。


「…君、誰?」
「…へ?」

…直属の上司に言われ、きょとんとする。