仕事を終わらせ、指定された喫茶店で、待っていると。

『悪い、もう少しだけ待ってて』

と、きよちゃんから連絡が入り、了解と返事をすると、紅茶を飲んだ。

…思わず、その紅茶を吹き出しそうになった。

だって、私の目の前を、腕を組んだ二人が通りすぎていく。

「…春人」
「…ごめん、待たせたな」

私の声と、後ろからの声が重なった。

「…きよちゃん」
「…どうした?顔色悪いぞ?」

「…」
「…えっ?ちょっ!桜子?!」

突然泣き出した私にオロオロするきよちゃん。

そんな二人を見て、周囲は冷ややかな目で、きよちゃんをみている。

『ブスを泣かせたイケメン』

などと、思われているに違いないが、全くそんな筈もなく。とりあえず、私をその場から連れ出したきよちゃんは、人気のないベンチに私を座らせた。

「…桜子」

横に座るきよちゃんは、私の背中を優しく撫でてくれている。

そのおかげもあり、少しして、涙は止まった。

「…桜子」
「…ごめん、突然泣き出して」

「…謝るなよ。…でも、何があったかくらいは聞かせろよ?」
「…」

…泣いた理由。

話せるはずもない。

悪いことをしてるわけではないけれど、理由を話すイコール、私と春人の関係もバレる。

私はいいけれど、春人に迷惑をかけるんじゃないかなと思えてならない。

春人は、きよちゃんの企画部の先輩だし。