夕飯の支度ができると、榊さんも一緒にテーブルに皿を並べてくれて、一緒に食事を楽しんだ。

「準備してくれたから、片付けは俺がやる」
「…でも、私もう大丈夫なんで」

口に手を当てられた。

「…言っただろ?俺は、好きな女は溺愛するんだって」
「…そんなに甘やかしてると、何にもしなくなりますよ」

挑発的な言葉を放つ。…と。

「…いいよ」
「…」

…そうくるとは思わなかった。

負けた…悔しい。そう思うのは、私だけ?

…。

片付けも、お風呂も済ませた私達。

ところで…

「…帰らないんですか?」
「…言っただろ?ずっとここにいるからって」

ニコッとされても。ニコッとされても!

一緒に寝るとなると、まさか…

心の準備なんて出来ておりませんが?

「…帰りましょ?」
「…湯冷めさせる気?」
「…う」

…企画部のエースを風邪ひかせるわけには。

ジリジリと私に近寄る榊さんに固まるしかなくて、顔まで近づいてきて、私は体を硬直させ、ぎゅっと目を閉じた。

…ちゅ。

…はれ?…あ、れれ?

キスはされたんだけど、場所が。

ゆっくり目を開けると、笑みを浮かべた榊さんの顔が映った。

「…今夜はキスしかしない。…心の準備が出来るまで待つよ。これから長い付き合いなんだから、ガッツクつもりなんてないし」

「…榊さん」

「…その代わり」

ぎゅっと私を抱き締めると、意地悪な笑みを浮かべた。



「…春人って、呼んで」

…なんて、恐れ多い。