…結局、きよちゃんには用事が終わりそうにないと嘘をつき、会うことを止めた。

榊さんのいなくなった部屋は妙に広く感じてしまう。

自分の蒔いた種は、自分で刈らねばならない。

が。

ありもしない事を認めてしまってはどうしようもない。きよちゃんには言えるわけないし。

榊さんと私に面識がない事になってるから。

…えーい、考えていても仕方がない。

私は気を取り直して、身支度をすると、病院に向かった。

その日のうちに、シーネは外れ、普通の生活に戻れることになった。

これでもう何もかも、榊さんとは、繋がりがなくなった。

病院をでると、帰宅した。

せっかくの休みなのに、何にもしたくない。

ソファーの上で、ゴロゴロする。

ブランケットを抱き締めてみると、動きが止まった。

「…榊さんの匂いがする」

榊さんの香水の匂い。

優しくて甘い…落ち着く…

「…バカだなぁ…私」

ぐす…ぐす…

泣いても仕方ないのに、また泣けてきて、ブランケットをぎゅっと抱き締めた。

…泣きつかれて、ソファーの上で眠ってしまっていた。

…目が覚めると、午後3時。

「…うーん、あ、そうだ」

…気分転換におやつでも作るか。

突然思い立ち、クッキーを作り始める。

何かあれば、いつもこうやって、おやつを作ると、何も考えずにすむから。