…何処かに着いたのか、私を椅子に座らせた。

「…ここは」
「みりゃわかるだろ。医務室だよ。ったく。誰もいねぇ」

そんな事を言いながら、湿布、テーピング、ハサミを手際よく取っていくなり、突然私の前に膝まずいた。

その行動にギョッとする。

「…あの」
「…手当てするから、ストッキングを脱げ」

「…は?…はぁ?!」

真っ赤な顔で驚く私を、睨み付けた榊さんに、萎縮する。

「…さっさとしろ。俺は仕事に戻りたい」
「…う、…後ろ向いててください」

私の言葉に、めんどくさそうにしながらも、後ろを向いてくれた。

私はサッとストッキングを脱ぐと、再び座る。

「…脱ぎました」
「…腫れてきてる、捻挫だな」

そう言いながら、湿布を張り、上からテーピングを手際よく巻いていく。

「…手当て上手いですね」

あまりの手際良さに口に出た。

「…学生時代、バスケしてて、よく捻挫とかしてたから、これくらい」

…ものの数分で、手当ては終了した。

「…ありがとうございました」
「…立って、歩いて」

榊さんに言われるまま、立ち上がり、歩いてみた。痛みはあるが、ちゃんと歩ける。

納得したのか、満足そうに頷いた榊さん。

「…これなら仕事に支障はないみたいだな」
「…はい」

「…それじゃあ」
「…あ、ありがとうございました」

榊さんに深々と頭を下げた。


「…帰り、迎えにいくから」


そのあり得ない言葉に驚いて顔をあげた時には、もう、榊さんはいなかった。