ブスも歩けばイケメンに当たる⁉

…午後9時5分前。

インターホンが鳴った。

除き穴を覗けば、榊さんで…私は深呼吸をすると、意を決して、ドアを開けた。

「…ただいま」
「…お帰りなさい。あの、これ」

目の前の榊さんに、私はボストンバッグを押し付けた。

当然、榊さんは、何事かと驚き顔で私を見つめる。

「…カップル成立おめでとうございます」
「…は?」

「…こんなところに榊さんが居るのは大事なので、お帰りください」

吐き捨てたように台詞だけを言うと、呆気にとられる榊さんには目もくれず、勢いよくドアを閉めて、鍵をかけた。

「…ぁおい!桜子!なにしてんだ‼開けろ!」
「イヤです!お帰りください!」

「…ふさげんな!帰ったら話があるって言っただろ?」

…彼女が出来たなんて、聞きたくもない。

「…聞きたくないです。お帰りください」
「…桜子!!」

「…お願いだから、お帰りください」
「…」

しばらくそんな言い合いが続いたが、外が静かになった。

…諦めて、帰ったかな。

除き穴を覗けば、榊さんの姿はなかった。

…今頃涙がポロポロ落ちていく。

「…泣くな、私」

自分に何度も言い聞かせたけど、なかなか涙は、治まらなかった。