「…大丈夫?伊集院さん」
「…へ?ぁ、あー!大丈夫です、大丈夫です!」

そう言いながら、資料を抱え立ち上がる。

そして、目一杯顔を歪めた。

足に激痛が走った。

…この資料を抱えて歩くなんて、絶対無理だ。

だけど、ここで榊さんに迷惑はかけたくない。

私は精一杯の作り笑いを浮かべ、歩き出す。

ガシッ。…肩を捕まれ、止められる。

「…それどこに持っていくの?」

すごく怖い顔をした榊さんに問いかけられ、顔がひきつる。

「…三階の企画部に」
「…あっそ」

そう言うなり、ひょいっと資料を取り上げられ、さっさと歩き出してしまった榊さんに。

「…あのちょっと!」

追いかけるなんて無理だ。…痛すぎる。

「…すぐ戻ってくるから、壁にもたれといて」

相変わらず怖い顔をした榊さんに言われたかと思ったときには、もう行ってしまっていた。

「…こんなところにいたって仕事できませんけど」

そう呟いて、溜め息をついた。

…待つこと数分。

再び榊さんが現れた。

ずっと、怖い顔をしたままの榊さんに、困惑する。

「…すみませんでした。ありがとうございました」
「…ほら、いくよ」

「…え?…ひゃっ!」

お、おおおお、お姫様抱っこ。

しかも、イケメンに。

生まれて初めての経験に、言葉を失い、人目に晒されるという羞恥心全開!

「…暴れんな!恥ずかしいなら、俺の肩に顔を隠せ」

お、おっしゃる通りに致します…