大量の資料を抱え、エレベーターにむかう。

重い上に、目の前まである高さの資料に、前方を見ることは許されない。

だから、横に見える部屋を確認しながら、恐る恐る前に進む。

さぁ、そこを右に曲がれば、エレベーターがある。

「…わっ!」「…きゃっ」

飛び出してきた誰かにぶつかり、大事な資料をばら蒔くと同時にその場にこけ、尻餅をついてしまった。

「…ぃったぁー」

そんなことを呟きながら、ばら蒔いた資料をかき集める。

その時気づいた違和感。

何てことだろう。足首を捻ったようだ。

ちょっと体重をかけるだけで、顔が歪む。

「…すみませんでした。前も見ず突然飛び出してきてしまって」

そう言いながら、一緒に拾ってくれた資料を私に手渡した。

…。

ぶつかった相手の顔を見て、思わず固まる。

榊春人(さかきはると)企画部のエース。

183センチの長身、スラッとしたスレンダーな体型。

二重で大きな目に、すっと高い鼻。

爽やかな黒髪短髪。

誰もが認めるイケメンだ。


それに対して、長いストレートの黒髪をいつも後ろに一つに束ね、度のきつい黒縁メガネに、化粧も、ファンデーションと、うっすら口紅をつけてるくらいの地味な私。

伊集院 桜子(いじゅういんさくらこ)