王子は少女が見えなくなってからも、ずっと少女がいた方向を見つめていました。

「王子、そろそろお時間が」

王子がハッと我に返ると、傍には騎士が立っていました。

「なんだ、お前もくるのか。お前には世話になった、もう十分に役目を果たしてくれたのだから、お前も行っていいのだぞ」

「何をおっしゃるのですか。私が死ぬときは、あなたが死んでこの国が滅んだときです。私は、あなたがたと一緒に落ちるところまで落ちます」

「面白いことを言うやつだな。確かに、谷底に落ちようとも君たちが一緒なら楽しそうだ。だが、僕はまだこの世界を離れるつもりはない」

「もちろん、私もそのつもりです」


騎士が真顔で言うので、王子は笑いました。

「お前は、昔から変わらないな。後悔するなよ」


いざ、いこうか。
王子は、騎士から剣を受け取り部屋を出ました。




「姫が、僕の知らないところで笑ってくれてたらそれだけで僕は幸せだよ」