長いこと歩いていたでしょうか。影は長く伸び、すっかり黄昏時になっていました。
しかし、お城はまだまだ遠くに見えます。歩いたはずなのにちっとも進んでいる気がしません。もうしばらくしたら、夜がやってくるでしょう。夜の森と違い、動物に襲われる危険はないですが、街は街でまた別の危険が潜んでいます。事実、昼間と違って街の雰囲気も、人の様子も変わって行きました。どこかで休んでいくにも、お金は微々たる額しか持ち合わせていません。

困ったな、外で一晩過ごすならどこか探さないと、考えながら歩いていると人にぶつかりました。

「痛いな、なにするんだ!」

見ると、若い男が立って嫌そうな顔でこちらを見ていました。
いけない、うっかり考えごとをしていてちゃんと前を見て歩いてなかったわ。