ベールが落ちたのを合図に、音楽がどこからともなく流れてきました。
その曲は、街で流れていた曲と違い、悲しげな曲でした。
ゆっくりと奏でられる曲に、踊り子はまるで花から花へ飛び移る蝶のように舞いました。
目で観客を誘惑し、指先まで音を纏い、後ろを向くと見える背中は細く、シルクのように艶やかでした。
そして、踊り子が動くたびに、観客は高揚していきました。

少女も例外にもれずに、踊り子の魅力にとりつかれていきました。
踊り子が、演目を終えてもその立ち姿さえ、芸術でした。

鼓膜が破れそうなほどの歓声と拍手。少女も負けないくらいに手を叩きました。
踊り子は、それを見て微笑みながらゆっくりとお辞儀をし、舞台からはけていきました。

きっと、吟遊詩人が言っていた街一番の踊り子は、あの人で間違いない。
あんなに綺麗なお顔立ちだもの、あれ以上の踊り子はいないわ。