あれもう、おしまいかしら?と不思議に思っていると、観客がざわざわとし始めました。
どうやらまだ続くようです。ただ、さきほどとは違って少し周りが落ち着かないようでした。

スッと舞台上に、人が立ちました。すらりとした綺麗な印象を受けました。顔はベールに覆われてよく見えません。
先ほどの演目とは違い、後ろに演奏者がいなければ他の踊り子の姿もありません。
その姿は、儚く脆く、触れれば一瞬で壊れそうな一輪の花そのものでした。
それを見た観客は、歓喜をあげることもなくただじっと見つめていました。

踊り子が一歩踏み出すと、ベールがするりと落ちてその下に隠された顔を見ることが出来ました。その顔は、はっとするほどの端麗な顔立ちで、神に愛された子と言っても過言ではないくらいでした。
この美しさを言い表すために、この世の全ての言葉をかき集めても、きっと言い表せないと、少女は思いました。