その答えは、すぐに出ました。吟遊詩人が少女の顔まで近づいたのです。その顔は、出会ったときのとびっきりの笑顔でした。

「そんな不安な顔をするな、大丈夫さ。出会ったときの泣いていたお嬢ちゃんより、今のお嬢ちゃんにほうがずっと強い」

「私、泣き虫じゃないわ」

「はは、そうだな。もとの世界に戻れてまたどこかで会えたら、今度はお嬢ちゃんの村のことを教えてくれ。他の世界のことも知りたい」

「ええ、もちろん! ゆっくりお茶でもしましょ、話すことは山ほどあるんだから!」

2人は見つめ合い、笑いました。
そして名残惜しく、そっと彼の手を放しました。


「いってきます」

「ああ、いってらっしゃい」


彼女は、人々と一緒に建物の中へ入って行きました。
その姿が、見えなくなっても吟遊詩人はその場から離れませんでした。








「幸運を祈るよ、お嬢さん」