背表紙を閉じる前に、私は大粒の涙を流していた。
とても静かに、声を出さずにぼろぼろと流れた涙は、本を濡らしていった。

私は、こんなにも大事にしていたものを忘れていたんだ。
あの頃の私は、この本の中の6人に恋をしていた。ずっと好きでいた。
初めて出会ったときのときめきを、私はずっと忘れたくなくて何度もこの世界に飛び込んだ。何度も約束を誓った。この世界は、私の全てであり、心の支えだった。

けれど、大きくなるにつれて違うものが私の心を占めていき、この本のことはすっかり忘れていった。あれだけ夢中になっていたのに。私は、この世界を本棚の隅っこに追いやった。

それでも、この世界は私を見えないところから見守っていてくれた。
私は、あなたのことなんてすっかり忘れていたのに、寄り添ってくれるだなんてどこまでお人好しなの。

あなたは、ずっと待ち続けていたでしょうか。
大きくなった私を見ても、あなたは私だと気づいてくれるでしょうか。
その優しさで、私を包んでくれるでしょうか。