そのイケメン、オタクですから!

コンコンッ。

ノックの音が聞こえて、桜井先輩がゆっくりと扉を開いた。
「あのー、入会希望なんですけど……」
「また? どうする、悠斗」

これはデジャブ?
さっきの自分を見ているような光景。

女の子二人組がドアの向こうにいて、興味深々な瞳が及川先輩と桜井先輩に注がれている。

「あ? 断れよ」
無表情に戻った及川先輩が、ついさっきと一語一句違わない返答をする。

「だって。ごめんね」
「えー」
ドアを閉めた後、廊下の話し声が響いて来た。

「やっぱり断られちゃったねー」
「でも桜井先輩と及川先輩の顔見れただけで十分じゃない? 格好よかったねー」

桜井先輩が首を竦めて口を開く。
「さっきはごめんね。あんなのばっかりなんだ」
及川先輩は鬱陶しそうな顔をして、パソコンに向かって座りなおす。

私達もただのミーハーだと思われたわけだ。
文化祭のファッションショーでの観客も、散り散りになる時口々に二人の名前を出してたから、それも納得なんだけれど。