「……誰?」
前にいた同じクラスの男子が呟いた。

「留愛! お前、なんて格好してるんだ!」
及川先輩がいきなり怒鳴る。

「なんて格好って、ちゃんと髪は黒く染めたし、学校指定じゃないけど靴下は白だし、校則は破ってないと思いますけど」

何でいきなり怒られなきゃいけないの。
そりゃあ私のせいで及川先輩が責められてるのはわかってますけど。
私の格好は今関係ないじゃない。

化粧だって薄くしかしてないし、スカート丈だって……。
「そうじゃなくて、メガネはどうした?!」

「え?」
思わず自分の顔に手をやる。

「バイトの事ばれちゃったんだからもう変装はいらないと思って……まずかったですか?」
「当たり前だ、馬鹿!」

大勢の前で馬鹿はないじゃない。
何でそんなこと言われなきゃいけないの?
私は先輩を睨む。

「七瀬かよ! マジで?」
「うそ……別人……」

教室がまたざわつき始める。
私はもう一度頭を下げて、一呼吸おいて大きな声で叫んだ。