「何も言わずに勝手に姿を消して…ウチが、どんだけ心配したかわかっとるん?

ケータイに電話しても繋がらない、家に行っても誰もいない、誰に聞いても“どこへ行ったか知らん”なんて言われて…ウチがどんだけ心配したか、嘉門くんはわかっとるの?」

声を震わせながら言ったまやに、
「――すまんかった…」

嘉門は謝った。

「謝って済む問題じゃないやろ?」

そう言って嘉門を責めたまやの声は今にも泣きそうだった。

「なあ、10年前――初めてデートした時のこと、覚えとるか?

俺がいなくなる前に1度だけ、デートしたことあったやろ?」

嘉門が聞いてきた。

10年前の初めてのデートを忘れる訳がなかった。

あれは、大学が夏休みに入った時のこと。

自分たちは有名なテーマパークで初めてのデートをした。