世界にひとつのどこにもない物語

「支度ができたらいつでも言ってや、すぐに車で送ったるから」

そう言った狼谷に、
「…はい、わかりました」

まやはふてくされた様子で返事をした。

もうこの際仕方がない、今日は狼谷の車で会社まで送ってもらおう。

朝食は…1食ぐらい抜いても死ぬ訳ではないから大丈夫だ。

「狼谷さんはお仕事とか大丈夫なんですか?

毎朝のように送ってもらっていますけど…」

前から思っていた疑問をまやは聞いた。

「わいの場合は重役出勤と言うヤツや」

狼谷が得意気に笑いながら答えた。

(聞くんじゃなかったわ…)

得意気に笑っている狼谷の顔から目をそらすと、まやはバスルームへと向かうために部屋を後にした。