世界にひとつのどこにもない物語

(テメ…!

さっき、ドーナツを食べた手で人の肩をたたきやがって…!)

そう罵って真壁の手を振り払いたくなったが、上司を相手にそんなことをする訳にはいかないので笑顔で我慢をした。

「いえ、私は人として当たり前の行動を行っただけです」

まやは笑顔で真壁に言った。

「天都くんみたいな優秀なテラーさんがいるおかげで、銀行も安泰だな」

ワハハと得意そうに笑っている真壁の隣で、
(何が安泰や!

“銀行の評判”やのうて、“自分の評価”が“上昇”するの間違いやろ!)

まやは顔ははにかんだように笑いながら、心の中で暴言を連発していた。