世界にひとつのどこにもない物語

目覚まし時計は後少しで6時になろうとしていた。

「大変!」

突然叫んだまやに、狼谷は耳が痛いと言うように人差し指で耳をふさいだ。

「何やねん、急に大きい声出して…。

ビックリしたやないかい」

訳がわからない顔をしている狼谷に対応している場合ではない。

服は昨日のままのうえに、メイクも落としていない!

そのうえ、風呂にも入っていない!

「急いで支度をしなきゃ!」

そう言って狼谷の腕から出ようとしたまやだったが、
「ええやないの、少しくらいゆっくりしたって」

狼谷がそれを止めた。

ペチリと、まやは狼谷の額をたたいた。

「アイタッ!」

「こっちはそれどころじゃないんです!」

狼谷が怯んだすきに、まやは腕の中から抜け出した。