世界にひとつのどこにもない物語

まやは狼谷の肩に顔を埋めるようにもたれかかった。

震えている彼女の肩を大切なものを扱うように、狼谷は抱きしめた。

「わいは、絶対にまやを裏切らへん。

まやがわいのことを嫌いでも、わいはまやのことが好きや。

例えまやがわいのことを信用できへんくっても、信用できるように何度でも努力をする。

わいがまやのことを守るから」

優しく、ささやくように狼谷が言った。

「――うん…」

狼谷の肩で、まやは呟くように返事をして首を縦に振ってうなずいた。

「もう1人やないからな。

何かあっても、1人で抱え込まんとってや。

わいがそばにおるから、何でも言ってや」

「――うん…」

「ええ子や」

ポンポンと、狼谷はまやの背中をたたいた。