世界にひとつのどこにもない物語

「わいはまやのことを嫌いにならへん。

まやが好きだから、まやを裏切らへん。

わいのこの気持ちに、ウソも偽りもあらへん」

狼谷はさらに言い返した。

「ウソを言わないでよ、何にも思ってないくせに…」

「ほな、何でわいに全て話してくれたんよ?

ウソだ裏切るって騒いどったくせに、何で話してくれたんよ?」

まやの言葉をさえぎるように、狼谷が言った。

狼谷の口から出てきたその言葉に、
「そ、それは…」

まやは泣き腫らした目を伏せた。

「少しでもわいのことを信じとるから、全部話そうと思ったんやろ?

友達も恋人もいらないなんてえらそうなことを言うてるけど、本当は1人でおることがつらかったんやろ?

1人でおることが苦しかったんやろ?」

狼谷のその言葉は、まやの胸に静かに染みた。