世界にひとつのどこにもない物語

「大学を卒業したらすぐに故郷を出ようと思って、大学4年の就職活動は県外の会社をいくつか受けました。

両親に故郷を出て働きたいって言うことを話したら、当たり前ですけど反対を受けました。

“地元で働けばいいじゃないか”って何度も言われて、何度も説得をされました。

1人娘ですから反対をされても仕方がないんですけど…でも両親も現金なもので、私が厳しい就職活動の末に東京の銀行から内定をもらったって言ったら故郷を出ることを許可してくれました」

「それで、ずっと1人でおったんか?」

そう聞いてきた狼谷に、まやは首を縦に振ってうなずいた。

「もう、誰も信じられませんでした。

友達は絶対に作らない、恋人も絶対に作らないって決めて…どんなに信用しても、人は必ず裏切るからって」

「そんなのウソや」

そう言った狼谷に、
「何がウソだって言うんですか?

あなただって、いつかは私のことを裏切るんでしょう?

今は好きだとか何とか言っているけれど、いつかは私のことを嫌いになって…」

まやは言い返した。