「知りあいなんは、わいにもわかっとる。

でも何で怯えとったんよ?

知りあいやったら知りあいらしく返事してもええんとちゃう?

わいがおったからできへんかったんか?」

「違う」

狼谷の質問に、まやは首を横に振って答えた。

「ほな、何でや?

わいにもわかるように教えてくれや」

そう言った狼谷にまやは口を閉じた。

「あんな…」

狼谷はそう話しかけると、まやの肩を自分の方へと引き寄せた。

「わいは、まやが心配やから聞いてんねん。

何で怯えとったんか、何があってまやをそうさせているのか知りたいだけやねん。

別に過去のことを聞いとる訳やないんやよ。

どんな人間にだって過去はあるに違いないんやから」

まるで小さな子供に言い聞かせているかのような狼谷の声に、まやは泣きそうになった。