電気すらついていないため、部屋は真っ暗だった。

まやはベッドのうえで膝を抱えて、そこに顔を埋めるようにうずくまっていた。

その後はタクシーに乗って家に帰ってきたのだが、部屋から1歩も出ることができない状態になっていた。

いつまでそうしていたのだろうか?

コンコン

「まや、入るで」

ドアをたたいた後で狼谷が声をかけてきた。

ガチャッと部屋のドアが開いたかと思ったら、それまで真っ暗だった部屋に電気がついた。

「大丈夫か?」

ギシッと、ベッドが音を立てたかと思ったら隣が沈んだ。

自分の隣に狼谷が腰を下ろしたのだと言うことがわかった。

「帰ってから何も食うてへんやろ?

少しでもええから、腹に何かを入れた方がええで」

すぐ近くで感じたいい匂いに、まやはゆっくりと顔をあげた。