「やめて!」

まやは狼谷の手を引っ張って止めた。

急に手を引っ張られた狼谷は、
「さっきからどないしたんや?

この男に何かされたんか?」

訳がわからなくて、まやに質問をした。

ひどく怯えているまやの様子に、狼谷はどうすればいいのかわからない。

「仕方ない」

そう言ったのは嘉門だった。

「突然やったから戸惑うのも当然のことやな。

またの機会にでもするわ、ほな」

嘉門が立ち去った瞬間、ガクン…とまやは膝から崩れ落ちた。

「わわっ、何や急に」

彼女の道連れにされるように、狼谷も一緒になって崩れ落ちるはめになってしまった。

「ホンマに、一体どないしたんよ…」

そう言って狼谷はまやの顔を覗き込んだ。

覗き込んだ彼女の顔は嘉門が立ち去ったと言うのに、まだ恐怖で怯えていた。