世界にひとつのどこにもない物語

「ありがとうございます!」

お礼を言ったおばあさんに、
「いえ、とんでもございません」

まやははにかんだように微笑みながら返事をした。

「あなたのおかげで助かりました!」

「そんな、私は人として当然のことをしたまでだと思っておりますので…」

(全く、ほんまに迷惑な話やわ。

巻き込まれるこっちの身にもなってみろや、このクソババアが)

微笑みの顔を作りながら、心の中で暴言を吐いた。

「本当にありがとうございました!」

おばあさんはまやに向かって頭を下げると、銀行を後にした。

(やれやれ、7時に帰れるどころか8時に帰れるかどうかも怪しくなってきたわ…)

おばあさんが銀行を出たことを確認すると、まやはカウンターの中に戻った。