「見た!?」

「雑誌に掲載されていた写真よりもすっごいイケメンだった!」

「どうしよう、一生自慢できる!」

「あれが今話題の『狼谷財閥』の副社長だなんて…!」

他人事のようにその騒ぎを眺めていたら、
「天都さん、すごいですね」

ポンと肩をたたかれたので振り返ると、倉坂だった。

「何がですか?」

そう聞いたまやに、
「あの『狼谷財閥』の副社長・狼谷展義さんと恋人同士で、そのうえプロポーズをされちゃうなんて…!

天都さんはやっぱりすごいです!

後でじっくりと聞かせてもらいますからね!」

倉坂はニッと歯を見せて笑うと、自分のデスクへと戻って行った。

(すごいって、人を助けただけやで?

何でプロポーズされなあかんのよ)

まやは頭痛がしたと言うように、人差し指でこめかみを押さえた。