狼谷はやれやれと言うように息を吐くと、
「今日のところは引き取らせてもらうわ。

警察に呼ばれたら都合が悪いからな」
と、言った。

「せやけど、わいはあきらめが悪いで?

業務の邪魔やからと言って引き下がるほど、ええヤツではないからな。

またきさせてもらうわ」

狼谷はまやに背中を見せると、
「ほな、さいなら」

ヒラヒラと手を振りながら、その場から立ち去った。

狼谷が銀行から立ち去ったその瞬間、まやは深く息を吐いた。

(何が“好きだから”や。

そんなもんで全ての女が信用すると思ったら大間違いや)

心の中で暴言を吐いたまやとは対照的に、周りはまるで有名人を目撃したかのような興奮状態で騒がしかった。