世界にひとつのどこにもない物語

「えっと…」

(結婚って何や、結婚って!?

初対面…って言っても会ったのは2回目やけど、結婚って何や!?)

心の中の罵倒は、当然のことながら誰にも聞こえていない。

「君が好きやからに決まっとるやんけ」

関西弁独特のイントネーションで狼谷が言った。

「君が好きやからこうして会いにきてプロポーズをしたんやないかい」

(やっぱり、頭おかしいわ…。

わざわざ会いにきてプロポーズにきたやと?

バカも休み休みにしろや!)

心の中の暴言を隠すために、まやはニッコリと微笑んだ。

「ごめんなさい」

微笑みながら謝ったまやに、
「えっ?」

狼谷は訳がわからないと言うように聞き返した。