世界にひとつのどこにもない物語

「えっ、知りあい?」

「さあ…」

後ろでは同僚たちが騒いでいる。

「やっと君に会えたわ」

まやの目線にあわせるように、男が顔を覗き込んできた。

「狼谷展義(カミタニノブヨシ)、ちゅうもんや。

以後お見知りおきを」

男――狼谷はニヤリと微笑んだ。

「今日はどう言った…」

「わいと結婚してくれまへんか?」

まやの言葉をさえぎるように狼谷が言った。

「…はい?」

(こいつ、頭おかしいんちゃうか?)

言われたまやはどう返せばいいのかわからなかった。