世界にひとつのどこにもない物語

それから数日後のことだった。

「ありがとうございましたー」

窓口でいつものように笑顔で客を見送ったその時である。

「あの人って『狼谷財閥』の副社長じゃない?」

「ホントだ、でも何で?」

「背が高いな…」

「かっこいい…!」

ザワザワと騒ぎ出した客たちに、まやは訳がわからなかった。

(何かあったんやろか?)

客の手によって開けられた花道に、この場を騒がせている当人が現れた。

「あっ!」

その顔を見たまやは大きな声を出して驚いた。

当人の正体は、数日前に病院で会ったあの男だった。

(あいつ、一体何しにきたんや!?)

男はまやの姿を見つけると、彼女がいる窓口へと歩み寄ってきた。