世界にひとつのどこにもない物語

「あっ、その方でしたら先ほど分娩室に…」

まやは男の元へ駆け寄ると、そう声をかけた。

「えっ…ああ、おおきに」

男はまやにお礼を言った。

(おっ…!?)

思わず心の声が口に出そうになったが、まやはグッとこらえた。

「ああ、もしかして姉を助けた者でっか?」

男は関西弁でまやに聞いてきた。

「ええ、はい…」

関西弁に戸惑いながら、まやは首を縦に振ってうなずいた。

(こんな人が関西弁って、信じられへんわ…)

まやは目の前にいる男を観察するように見つめた。