世界にひとつのどこにもない物語

(ここって…いわゆる、金持ちしか入れないって言う噂の…?)

電話したマタニティタクシーに何故だか妊婦と一緒に乗り込んだまやは、病院にきていた。

銀行には先ほどタクシーの中で電話して事情を説明した。

まるでホテルか旅館のような造りをしている病院内で、まやは立ちすくむことしかできなかった。

(まさかとは思うけど、ウチが助けた人ってどこぞの大会社のお嬢やないよね?)

病院にもついて無事に妊婦を見送ったから銀行へ戻ろうと思った時だった。

「すまへん!

先ほど姉が運ばれたと言う連絡を受けた者ですけど!」

ドタドタと誰かが走って自分の横を通り過ぎたかと思ったら、黒いスーツ姿の男が近くにいた看護師に声をかけていた。