世界にひとつのどこにもない物語

「あっ、はい…」

まやの姿に気づいた妊婦は苦しそうに返事をした。

「すぐに救急車を…!」

スカートのポケットからスマートフォンを取り出そうとしたまやだったが、
「すみません、マタニティタクシーを呼んでください…」

彼女が突き出すように自分のカバンを出してきた。

「ま、マタニティタクシー、ですか…?」

そんなものがあるのかと、まやは思った。

「えっと…失礼します」

まやは小さく頭を下げると、彼女のカバンの中からスマートフォンを取り出した。

彼女にスマートフォンのロックを解除してもらうと、まやは登録していると言うマタニティタクシーに電話をかけた。