***







ナース「御倉さん、体調はどうですか?」

私の担当のナースさんは、いつも優しい。



私「ええ、少し良くなった気がします。」



ナース「私は何て言ったら良いのか...」


どんなに私と話すのが辛くても、この人だけはきちんと私と向き合って話してくれる。




私「そんなに自分を責めないでください。」

だから、あなただけは私の味方であって欲しい。



ナース「で、でも...」




私「本当に気になさらないでください。彼が決めたことですから。」




あなたが彼を止めなかったから、
私は命を落とさずに済んだ。



でも、もし私が死んでいたら、、彼はきっと違う道を選んでしまっていたと思う。





だから、他に方法がなかったといえば、そうなのかもしれない。







***








私は今、君の心臓で生きている。





君と出会ったのは...____









_____3年前








病室で静かに読書をしている所に、君が私の病室へと慌てて駆け込んできた。





その日の君は、交通事故に遭った彼女の元へと駆けつける為に来たそうで...




あまりにも慌てていたから、部屋を間違えてしまったそう。




その時の私は、とにかくビックリして...___





ちょっと固まってしまった。





けれど、君は...








君「清華!!」



私「...!?」




君「清華って...あれ?」




私「....!」




君「すみません、僕もしかして病室を間違えたりとか...?」




私「コクコク」



君「そ、そうですか!...ご迷惑をおかけしました。」



私「あ、あの...名前は分かりませんが、新しい患者さんならさっき、そこの角を曲がった先の病室に入っていきましたよ。」





君「あ、ありがとうございます。行ってみます!」





君は早く彼女の元へと行きたくて、私との会話なんてなかったかのように、走り去ってしまった。






それが君と私の初対面.._____






***







初対面の日から数日後____






〈コンコン〉




私「はい?」



珍しいな...いつもは両親か友人が週に一度訪ねてくるくらいなのに...




君「あの...先日、部屋を間違えて入って来た者ですが..」




え、、この人...この間の人___?





私「先日の...どうぞ、座ってください」




君「は、はい。」



ちょっと緊張してるのかな?





私「彼女さんのお部屋は分かりましたか?」





君「か、彼女の部屋ですか?」





私「えぇ。」





君「あれは、彼女ではなくて妹の病室を探していて...」





私「ご、ごめんなさいっ!私、てっきり彼女さんかと..!」





君「いえいえ!」





君「それで、あの...今日は御礼をしに来たんです。」





私「御礼ですか..?」





君「あと、少し遅れてたら僕は側に居られなかったことをずっと後悔するところだったので___。」





私「後悔、ですか...?」






君「実はあの時、妹がちょっと危険な状態だったんです。」





私「それで、、妹さんは一体どうなさったんですか?」





君「今はもう大丈夫です。今頃、ぐっすり寝てるんじゃないかな?」





私「そ、そうですか...良かったです!」





君「はい!だから、恩人のあなたに御礼をしに来たんです。」





私「お、御礼...どういった御礼なんでしょうか?」





君「これは、ささやかなプレゼントで、、こっちがもっと使えるモノかと...」





そう言って、君は私に可愛らしいピンクの花束をくれた..__
そして、君の名前が入った名刺を私に差し出してくれたのだった。





私「あ、あの...この名刺は__ 」





君「名刺がどうかしましたか?」


私「那津永 瞬さんって...あの、那津永さんですか?」



な、那津永(なつえい)さん...
って、あの人気若手俳優の!!!?




君「先日は失礼しました。」





君「infinitYプロダクション所属の那津永 瞬(なつえい しゅん)です。」





私「まさか、先日の方が那津永さんだったなんて...!ビックリです!」






君「まぁ、普通はそうですよね!あんなに慌てて病室に駆け込んで来たのが、俳優だなんて思いませんよね、、」





私「とても慌ててましたからね...」






君「あの、何かあれば僕の名刺に書いてある番号にご連絡ください。こっちはプライベートの方なので、いつでもどうぞ」






私「い、いえ!そんな...とんでもないです!!私なんて那津永さんのプライベート番号をもらえるような立場じゃありませんし...」







君「そんなことないですよ。僕も初対面の方に最初からプライベートの番号なんて渡したりしませんし...」






君「それだけ、あなたを信用していると、そう思ってはいただけませんか?」






私「そこまで言われてしまうと...ちょ、ちょっと恥ずかしいです。」




君「あの、かなり図々しいかと思うのですが...お名前を聞いても?」






私「あ、はいっ!ごめんなさい、自己紹介をしていなくて...」





私「アパレル企業の*si shionie*で、デザイナーをしています、御倉ハル(みくら はる)です。」






君「御倉さん...ですか、、これからよろしくお願いします。」





私「えと、、これから?ですか...??」





君「そのうち、分かりますよ。」








そのうち、分かりますよ。と私に言った君の顔は...




少しだけ悪戯っぽいような、

イジワルなような..




そんな顔をしていたのを今でも覚えている。