「え...?」
心[こころ]は一枚のメモを見て驚愕していた。
-そのメモを見つけたのは心が家に帰ってきてふとテーブルの上を見た時である。
「何これ?」
メモを書いた覚えのない心は、そのメモを不思議そうに見つめた。
メモの内容を見て心はとても驚いた。
『もう無理だ。別れよう。』
それは昨日まで仲良く話していた彼氏、真[しん]からだった。
「な..ん...で..?」
心の頭には疑問しかなかった。
理由を聞こうと思い、心は真に電話を掛けた。
しかし、真が電話に出ることはなかった。
悲しさからか心の目からはボロボロと涙がこぼれ、その場でしばらくの間泣き喚いていた。
だが、時間が経つにつれてフツフツと真への怒りや憎しみが増えてきた。
「なんで、なんで、なんで、なんで...!!」
心は狂ったかのように叫び続けていた。
そして、そのまま靴も履かずに家を飛び出し、真の家へ目がけて一目散に走り続けていた。
真の家に着いた時、心の怒りは頂点に達していた。
"ピンポーン"
インターホンをならしてみても、真の応答はない。
何度鳴らしても真は出てこなかった。
このままでは諦めきれないと思い、扉に手をかけると、鍵はかかっていなかった。
扉を開けて名前を呼んでも、返事がなかった。
心は真が部屋にいて気づかないと思い、真の部屋へ向かった。
真の部屋の扉が少し空いていて、中の電気がついていることが確認できた。
そして扉を開けると、そこには知らない女が立っていた。
その女をよく見ると、身体中血まみれで、部屋も天井や壁など一面に血が飛んでいる状態だった。
「ふ..ふふふ....はははは....」
その女は、下を見ながら狂ったかのように急に笑い始めた。
女の足元には、バラバラになった人のようなものが転がっていた。
心は今までの真に対する怒りや憎しみが消え、恐怖に怯えていた。
「これでお兄ちゃんは私だけのもの...お兄ちゃん...お兄ちゃんの内臓とっても綺麗だよ...」
(お兄ちゃんってまさか...)
この声の主は、真の妹雪[ゆき]であった。
(なんで雪ちゃんがこんなこと...)
心が一歩後ろに下がった時、ガタッと大きな音がなった。
その瞬間、ばっと雪が心の方を向いた。
「っ!!」
「心さん見ちゃいましたか?」
心は恐怖で声が出なくなり、何も言えなかった。
「その顔は、見ちゃったんですね?」
(誰か助けて!!)
心は雪から逃げるように、少しずつ下がっていった。
「心さんが悪いんですよ?雪の大切なお兄ちゃんとっちゃうんだもん。...雪だけのお兄ちゃんなのに...。だから今度は雪がお兄ちゃんを心さんからとる。雪より辛い思いをしてね?」
心はついに壁にまで追い詰められてしまった。
「ねえ心さん。今、お兄ちゃんがいなくて辛い?悲しい?」
心は涙が止まらなかった。
「その顔が見たかったんだよ。心さんがさっさと別れてれば、こんなことしなかったのにね。もう心さんとも会えないなんて、寂しいな〜。な〜んちゃって〜。あははは!!」
(もうダメだ!!殺される!!)
「ばーいばいっ!!心さん」
「っ!!」
そこで心の意識は途絶えた。


「ふぁ〜、よく寝た〜」
心は自分のベットの上で目を覚ました。
「今日も一日頑張らないと!!」
心は元気に自分の家を出た。
テーブルの上に置いてある、一枚のメモに気づかずに...


心は、このメモに朝気付いていたら真を助けることが出来ました。気付いたのが夕方だったため、心からの返事に待ちきれなかった雪が、真を殺してしまいました。のうちに朝真の家に行けば、真は今も生きていたのかもしれません。心の確認不足により、真は殺されてしまいました。
あなたの家のテーブルをよく見て下さい。一枚のメモがありませんかほら...真っ赤に染まった、血だらけのメモが、あなたの目の前に...