君のため 〜生きている証を求めて〜



俺は、物心つく前から自分には父親がいないことを知っていた。

毎朝、バタバタと慌ただしく準備をする母。
夜には遅く帰ってきて、俺の洗濯物をたたんだり、朝ごはんの用意など、とても大変そうだった。

俺は、よく近所の親戚の人に預けられていた。だから、親がいなくても寂しくなんかなかった。
…と自分に言い聞かせてただけだった。

ある日、小学校の参観日の時、親と子供が一緒に行事をする、みたいなのがあった。
案の定、俺の親は来なかった。少し、少しだけいたんだ心。そこに漬け込むかのように、クラスのうるさい男子が俺を茶化してきた。

「お前の親、来ねーの?かわいそーにねぇ。」

本当は、来て欲しい。見てほしい。俺を。
俺は、走って教室を飛び出した。何だか無性に腹が立った。いつもは平気なのに。今日は、違った。母をからかわれている気がしたから。

俺は、人気のない教室に入り、隅の方で泣いた。今までにないくらいに泣いた、気がする。悔しかった。毎日一生懸命に働いてくれている母が傷つけられてるのが。

そんな時、ガラガラッと扉があく音が聞こえ、そちらへ向くと同じクラスの大人しい系の女の子、乃木 心珠がいた。

「み、じゅ?」

涙を拭きながら、心珠に話しかける。

「蓮くんは、悪くないよ!泣かないで。あんなの、気にしなくていいんだよ?私だって…親いないけど、今の生活、楽しいから!!」

と言ってとびきりの笑顔を見せた彼女。
そう、心珠の家は両親がどちらもいない。
祖父母の家で暮らしていて12歳上の姉がいる。

心珠だって、本当は寂しいよな…?
俺なんて、まだマシなんだ。

「悔しいなら。お母さんを少しでも助けてあげよ?」

…そうだ。その通り。こんなので悩むんじゃなくて、母を手伝って、少しでも助けてあげなきゃ。

「心珠、ありがとう。俺、頑張る!」

と言ってピースをしてみせた。

心珠もそれを見て、またふんわりとした笑顔を俺に見せた。

どきん。どきん。

これが、恋の始まりの合図だった。

心珠は俺が辛い時いつも声をかけてくれて、勇気を与えてくれた。心珠だって、自分の方が辛い時があるのに、俺に勇気を与えてくれる。

だから、俺が。

心珠の弱いところ、ずっと、ずっとそばにいて気づいてあげて、守ってやんねーといけない。
それが、俺の使命。


例え、幼なじみ以上になれなくたって。
必ず、守ってやる。何が、あっても。