不器用な彼に恋した私。

え、嘘?

「えぇっ!?」
――― 二回も言わせるな。いつ行くんだと尋ねている。


あ…あの翔さんが?
前は、ごり押しで無理やりデートを1回したのに。
なんで?
“デートなんて、無駄なものだ。”
なんてずっと言ってたくせに…。


――― 俺は今週土曜は空いている。日曜は実家の方に行かなければいけないが。


ウソウソウソ!?
土曜日?あー、私、いつでもフリーですよ!!!


「じゃ、土曜日にしましょう!!」
――― あぁ、分かった。じゃあ、プランでも建てたら俺の家来てくれ。




“俺の家”!?


「お…俺の家ですか?」
――― あぁ、一応そのプランでもダメなプランだったら却下する。
優子…いや、優と一回来ただろ?あそこに金曜夜9時までには来い。



私…なんか、レベルアップしているような気がします…。
プラン、あまり時間とか立てるの下手だけど、翔さんのためなら何なりと♡


「はい!!分かりました!!!」
――― それと…。


「はい?どうされました?」







――― 藍…。


“藍”
ドキッと思わず、してしまった。
だって、今まで井上だったから、突然の下の名前呼びには腰を抜かしそうになった。



「は…はい。」
――― こ…これからはプライベートでは下の名前で呼ぶことにする。
井上…や、藍も翔…って呼べ…。



いきなりの発展に脳の思考回路が…。
思わず、顔も真っ赤になる。
翔さんって…こんな人だったんだと新たな一面に脳内バラ色!!!


――― いや、お前、一応…その。
「…翔…!!!」



――― ゴホッッッ!!!



いきなりの咳込みに私も驚いて肩が揺れる。
言えって言ったのは貴方じゃないですか。


「やっぱやめときます。翔さんで。」
――― あぁ、そうしてくれ、井上。



ちょっと浮かれてた私がバカだったよ。
なんて思いながら10分程度の電話を切った。


電話を切ったときに目の前のカコに言われた。



“ヘタレ。”







***

結局名前の呼び合いは変わらず。
“翔さん”“井上”の安定の呼び方。
ただ、目が合うことが多くなって。


目が合うたびに、胸がバカみたいに高鳴って。
丸い丸い瞳に誰が映っているのかわからないけれど。
少なくとも私は土曜日が楽しみで、寝ても覚めても土曜日のことしかなかった。