不器用な彼に恋した私。

ハンドルを握りながら、視線をそらすことなく、車通りの多い大通りから高速に切り替えた二宮はそう答えた。

「二宮、なんかしたでしょ。カコに。」
「してねーよ。」

あっけらかんとしている二宮。
ブレずに横顔も、ワンコ。
そんなハンドルを握る腕をガシッと掴んで揺らす。

「ちょ、待て待て待て!!
高速!ここ、高速!!これで事故ったらお前のせい!!やめろ!!!」
「なんか、隠してる!隠してる!」


“二回も言うな!うるさい!”
とウザったそうに私をにらむ二宮。


「ほんとに何もしてないから。」

真面目にいったズシッときた声色。
ってことは、なんでカコはあんなに暗い表情なの?







でも、その迷宮入りした謎の根底はすぐに明かされる。
外回り後に誘ったいつもの鈴木ちゃんのカフェで。



「え?」
カコは衝撃の一言を私に言った。
思わずアボカドのチーズ焼きを口からポロリ。

「藍!汚い!!」
ウップス。
これは失礼。
でも、衝撃一言でこんな状態なんだからカコも悪いと思うよ。(悪くない。)





「私、二宮が好き。」
私、気づかなかった。

「そりゃ、藍は鈍感だから気づくわけないよ。」
だからか…。
“二宮”に反応した理由って…。

カコはいつも見せない頬を赤らめた表情でアイスティーを飲んでいた。
恋…する人って…ほんと、こんな感じなのか。

ってことは。私もこんな感じ?


「まぁ、私のことはどうだっていい。
藍のほうが問題でしょ。」

“結婚詐欺問題。”

「まぁ…、うん。」

「藍にずっと言いたかった名言があるんだけど。
ゲーテ知ってる?

ゲーテの名言に“愛する人の欠点を愛することができない者は、真に愛しているとはいえない”ってあるんだけど。」



あ、ドラマで見た。
なんだっけー…世界一簡単な恋?だっけ。

ドラマ名を思い出してる私に、ちょっと怒った声色で
“聞いてる”?


「聞イテマス聞イテマス。」
「随分とめんどくさそうですが。」

いつもの表情に戻ったカコ。
足を組みなおす。


「お仕事男子、意外とああ見えて器用そうに見えて不器用なんだよ。」


“不器用”?


「不器用?」
「ありゃ、どう考えても不器用としか言いようがない。」

カコは呆れながらそう、私に言った。